境界
 幸子の心境は複雑だった。
 罪悪感もあったが、
 こんな思い切った行動が取れる自分自身に驚いていた。

「どうしたの?何か気にしてるの?」

「別に…。」

「気にすることなんて、ないよ。」

「みんなしていることだから。」

「みんな?これって、所謂不倫でしょ。今までに、浮気は何回ぐらいしてるの?」

「数えきれないかな。」

「しかも、私とあなたは目と鼻の先に住んでいるのよ。近所の人とも、何度も?」

「うん、近所だろうが関係ないね。
むしろ近所の人妻の方が手っ取り早いよ。」

 あからさまに、よくここまで言えるものだとむしろ感心してしまった。
 吾郎には常識感というものがないのだろうか?
 いや、あるのだろうが、人とは違う常識感を持っているに違いない。
 後には、更に非常識な言動に驚愕させられることになるとは、
 この時幸子は想像すらしていなかった。




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