俺様のカゴの中
虎宇のその気持ち悪い思いはどっから来るんだ?



「もう家に寄越すな」

「留宇の意志で行ったんでしょ?俺には止める権利ないしね」

「相変わらず食えねぇな、虎宇…。お前がガキじゃなかったら海に沈めるとこだ」

「残念、ガキだから」



なんの電話かと思えばお礼の電話。



律儀なヤツめ…。



なぜか虎宇は憎めない。



弟がいたらこんな感じかな、なんて初めて思わせてくれたのが虎宇だった。



生憎俺に兄弟はいないけど…。



「気がないなら振ってやって。失恋も経験だと思うし」

「遠慮なく振りまくってんぞ」

「へぇ~、何気に諦め悪いんだ」

「お前は留宇をどいしたいんだ?」

「ん~…。しいて言うなら、カゴから出してやりたい…かな?」



カゴね、カゴ。



家というカゴか。



それには自分の意志ってのが必要不可欠。



きっと虎宇は兄として留宇に『自分』というモノを探させてる。



できた兄貴だな、シスコンだけど。



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