一番星
入学式。

あの日から俺は変わった。

親・・・いや人が信じられなくなった。


「一ノ宮聖弥くん!」

教室で呼ばれた俺の名前。

でも始めは自分のことだって分からなかった。


「聖弥くん?」

この言葉には反応した。


“一ノ宮”これは叔父と叔母の苗字。

3日前に初めて会った叔父に『お前は一ノ宮家の人間だ。』と言われた。

これはテレビにあった『預けられる』ってことだとすぐわかった。

でも抵抗はしなかった。

俺は親に捨てられた。

だったら住む場所を与えてくれる人の所にいよう。

まだ6才の俺はそう思った。


「お帰り聖弥。」

家に帰ると叔父が出迎えてくれた。


「ただいま叔父さん。」

「友達は出来たか?」

「うん。
 北条君と春日原くん。」

そう。

俺には友達が出来た。

子供って何をどう思っていてもすぐに心変わりする。


「そうか。
 仲良くするんだよ。」

叔父はそう言い部屋に戻っていった。

俺はこのときの“仲良くする”の意味は普通の大人が使うものと違うことにはまだ気付かない。
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