一番星
「ねぇ聖弥。
 叔母さんの家に住まない?」

俺が落ち着いた頃叔母は言った。


「うん。
 叔母さんのところ行く。」

俺は『住む』という言葉を勝手に『泊る』という言葉に変換していた。

その後叔母さんが俺の荷物を持って来て外に止まっていた車に2人で乗った。


車で1時間くらいの場所にあった叔母さんの家はすごく大きかった。

まだ小さかった俺に11畳の部屋もくれた。

おもちゃもあって沢山あって2,3日は平気で叔母さんの家にいた。

でも4日目くらいになってくると急に寂しさがこみ上げてきた。


「僕帰る。」

俺は叔母さんにそう告げた。

優しく笑って家まで送ってくれると思ってた。


「聖弥。
 あなたは捨てられたの。
 弥生さんたちに捨てられたのよ。」

叔母さんの口から出た言葉は残酷なものだった。

でも俺はまだその言葉を理解できなかった。


「捨てられるって何?」

この言葉を何回口にしただろう。

あの日からずっと言いつづけていた。

『捨てられる』その意味を知ったのはテレビでだった。

スピーカーから出てくる言葉の意味は分からなかったけど映像を見ていると『捨てられる』という言葉の意味が分かった気がした。


小学校入学まで約1週間。

俺はまだ知らなくていいような『親が子を捨てる』ということを知った。






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