幸せのカタチ~赤い宝物~

VS一歩づつ



―3月


温かい風が優しく頬をくすぐって、程よく花をつけた桜の木を揺らす。



今日、彰は中学校を卒業する。


進路はサッカーで有名な高校に推薦で合格。

プロも輩出している学校だ。


決まってからは、電車で1時間位の学校の練習場に行って練習に加わってる。



『コーチは厳しいけど、すげぇ為になる。』



そう嬉しそうに言ってた。


その彰の高校は全寮制で、春からは殆ど会えなくなる。



だから今日

もう一度彰に気持ちを伝えておきたい。


私にはそんな資格無いって思ったけど、彰が居なくなる前に、前みたいな失敗を繰り返さない為に


コレ以上後悔しないように



彰としっかり伝えておきたい。



卒業式が終わり、一足早く校門で彰が来るのを待つ。



ドキドキする…。



好きな人を待ってる時って、こんなにドキドキするんだ。

門の少し前で、彰がサッカー部の後輩に揉みくちゃにされてるのが見えた。


面倒見がよくて、みんなに慕われていた彰

…女の子にも囲まれてる。


でも、今日はムカつかない。こんなににも、みんなに好かれてる彰が


あの笑顔が私は好きだから。



< 138 / 151 >

この作品をシェア

pagetop