幸せのカタチ~赤い宝物~
VS男子
「愛果いるぅ~?」
教室の後ろのドアの方から私を呼ぶ声。
久しぶりに聞く声だけど、なぜか直ぐに誰か分かった。
サッカー部のレギュラーのキーパーである彼は、そこそこの有名人。
めったに近くて見れない人が現れ、クラス内がざわつく。
私の前の席に座って話をしていた女友達の理沙(リサ)が、コソコソ私に聞いて来た。
「愛果っ溝口先輩じゃん!
呼んでるよっ!?」
「うん薄々気付いてる。
聞えないフリしてんの。
まだ居る???」
「居る…ってゆうか、後ろに居る?」
理沙が上を見つめ、目を輝せている。
「はぁ?」
私が振り向くと笑顔の溝口先輩…。
私は理沙の上目使いとは程遠く、眉間にシワを寄せて先輩を見上げた。
「つーか、何の用?」
私が不機嫌な顔で言うと、笑顔のままの先輩は私の腕を取り私を教室から連れ出した。
「ちょっと!
ドコ連れて行くんですか!?溝口先輩っ!」
先輩は無言のまま、私を上へ上へ連れて行き屋上に出た。
「もぅっ!放してよっ!」
振りほどいた手で、先輩は空を指差した。
「愛果、ホラ見て!」