狼谷の のん
狼谷に迷い込む人間などは、 
誰も彼も、どこか怪しい。
悪人は、数知れずやってくる。
だけど、、誰もが認める大悪人はそうはやっては来ない。

ここ狼谷にも 都市化の波は  そこまでやって来ていた。
ゴルフ場の計画が持ち上がっていた。
このゴルフ場建設には裏がある。
新進気鋭の若手市長が 自然保護と郊外施設充実の調和を
公約に当選したのを きっかけに 狼谷の開発に着手したのであった。

狼谷の 狼たちの話では、 
その市長がとても やり手で、
無理な豪腕で その過程
相当数の人たちが 苦渋を飲んだと、、、言う事だった。

のんの3人目の肉の候補として 文句のない大悪人であった。

今日は、その市長が 開発地域の この森に視察に訪れる日だ。



見るからに、大悪人の市長が お供を連れ、森に訪れたのは、
もう夕闇がせまる頃だった。

のんは その市長と 目が合った。 
びっくりしたのは のんの方だ。
とても 人間とは 思えないその眼光は 
大悪人に 相応しい鋭い輝きを放っていた。 

その後、信じられない情景が 
のんの目の前で起きた。

市長は 何故か、その場で、全員散会を命じ、
ただ一人になったのだ。



そして、 のんにわかる言葉で、叫んだ。

「母さん、、、会いたかったよ。。。。」
 大人になった少年の声だった。
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