恋口の切りかた
「生き残れたのは奇跡と言っていい。

おそらく数々の幸運が重なったおかげだ。
他の者が同じような状況に置かれても死ぬだけだろう。

だが漣太郎、お前の友達はな、

その幸運を全て生かして六人を斬り伏せ生きのびた。

これができたということは、百遍似たような目にあっても、百遍とも切り抜ける力を持っているということだ」


「鬼の子」か、と親父殿がつぶやいて、俺はぎくりとする。


「確かに結果だけ見ても、鬼才と呼べる。

これは儂としても、ぜひともその子供が剣を振るうところを見てみたいと思うだろう? そりゃ」


「あいつは鬼の子なんかじゃねえ!」


楽しそうに語る親父殿を、俺はにらみつけた。


「兄上! 父上に向かって無礼な!」と、平司がとがめてくる。

刀丸の泣き顔と村人たちのあの視線が脳裏に浮かんで、俺は両手を握りしめた。


「いいやつなんだよ。それなのに、なんであんな目で見られなきゃならねえんだ……」


「未熟者だからだ」

親父殿は鼻で笑って、あっさりと言った。
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