恋口の切りかた
「まさかボクも、無数の鏡を分散させて設置しているとは思わなかったぞ。

しかもその全てに、日時によって異なる太陽の位置は自動仕掛けで正確に追跡できるカラクリが施されていて、人が手動で行うのは燃やす標的を狙う操作のみになっていた。
天文学にも通じていなければ不可能な仕掛けだ。

とんでもない精巧な技術だな」


鬼之介は感心したように言って、


「無数の鏡の光を一つの鏡に集め、その鏡の角度を人が操作して人間を燃やす。

その操作のためのカラクリの設置場所には数に限りがあるだろうと思った。
標的を目で見て狙うためには、これまで発火事件の起きた場所の周辺だろうと調べたら──

鏡を動かすための糸が屋根から地上に伸びている場所が八ヶ所見つかったのでね、そっちの糸は偽物とすり替えてホレ、本物はボクの手の中だ」


狐面が手にした糸を眺めて鼻を鳴らし、屋根の上から彼は両手に握った糸の束を掲げて見せた。


「この糸のある場所はもっと多く存在している可能性はあったが、

とりあえずボクが改造できたその八ヶ所の周辺を円士郎様たちにウロウロさせて、貴様らをおびき出すことにしたのさ」


「おのれ……」と、兵五郎が歯噛みした。
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