恋口の切りかた

 【円】

一昨日、俺が屋敷に戻るまで辛抱強く待っていた鬼之介は、酩酊した俺にこの天照の仕掛けについて語り、宗助を借りたいと言ってきた。


城下の屋根に、おそらく無数に仕掛けられている鏡を全て回収するのは不可能だが、それを操作するカラクリの部分ならば、手を加えて乗っ取ることができるかも知れないと言って、

鬼之介は宗助を使って、これまで昼間の焼死者が出た場所の周辺を重点的に調べ、設置されていた操作のためのカラクリを改造して、一昼夜で天照をこちらの支配下に置いてみせたのだった。


もしも待ちくたびれた鬼之介が帰ってしまって、これを翌日に回していたら間に合わなかった。
留玖に暴言を吐いてしまったことで自己嫌悪の塊になり、居店で飲んだくれていた俺を
彼が夜まで待ってくれていたことにはつくづく感謝すべきだった。


「円士郎様から天照大神が鏡の象徴だと聞かされてすぐに、鏡を使った手法を色々と考えてはみたのだがな……

目立たない大きさの仕掛けでどうやって瞬時に人体を焼き尽くすような火力を得ているのかが、ボクにもさっぱりわからなかった」


屋根の上から狐面に向かってそう語る鬼之介は、また目にあの「ごおぐる」とかいう眼鏡のようなものをつけている。

これも例の怪しい人物から知らされた先の世の道具だとかで、
今日のごおぐるにはなにやら色までついており、光から目を保護する「さんぐらす」とかいうものの役割もあるのだそうだ。
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