恋口の切りかた
逆袈裟(ぎゃくけさ)に斬り上げるように木刀を繰り出す。


親父殿の言葉を思い出し、

刀丸が斬った相手は別に武芸者じゃない。こんな動きはしなかったハズ──

そう言い聞かせて、


斬り上げる。

俺の剣が空を斬る。

刀丸はあっさり身をかわしていた。

間合いをつめ──いや、脇を抜けるように俺とすれ違う。


ヤバイ、これは。

俺ってば、胴ががら空き──


頭がそう認識する時間しか刀丸は許してくれなかった。


脇を抜けながら、刀丸が横薙ぎに腹に一撃を叩きつけてくる。

これまでの経験で、
胴ががら空きだと思うと同時に、俺はとっさに後ろに跳(と)んでいたが

そこに一撃を食らった。
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