恋口の切りかた
さて、十把一絡げに白輝血の連中と一緒に捕まった虎鶫の連中は、俺が神崎に言って直ちに解放させた。

白輝血の罪状はというと、留玖のことは公に出来ない、お玉という女は霊子が化けていただけで実在しないとなると──拐かしに関しては罪状が存在せず、誤認逮捕という扱いになってしまう。

お玉に関しては、俺にとってはまさに嬉しい誤算で──

つまり、兵五郎の店に乗り込んで連中を一斉にお縄にした町奉行所の手柄は事実上霧散し、


世間を騒がせ多数の死者を出した焼死事件に関する連中の罪を暴き、事件を解決した俺たち番方の助役の手柄が強調される形になった。


ただし、「他の者に模倣されるのを防ぐため」という名目で、家老の伊羽青文の命で、天照と月読の詳細については極秘扱いにされ、公にされることはなく、

カラクリを作った狐面の男の正体についても、かつて城下にいた人形斎という男とは別人だった、ということが公表されたのみで、人形斎の弟子であるという詳細は伊羽青文が握りつぶした。

まあ、あいつにしてみれば、過去に自分も使った手段や、自分がカラクリを作らせた者を暴露するような真似なワケだから──この辺りの情報は公開するなんて有り得ねえよな。


死んだ兵五郎が事件の首謀者とされ、白輝血の一家は鵺の目論見どおりに壊滅し、

一帯のシマは全て虎鶫の銀治郎一家のものとなって──


二代目鵺である与一が完全に掌握した形となった。


蜃蛟の伝九郎との勝負で隼人が左腕に負った傷は深く、癒えても完全に元のようには動かなくなるだろうとのことだった。

しばらくは自宅で療養することになった隼人は、しかし後悔は何もないと言っていた。



そして月が変わり、

新たに城下には盗賊改方が置かれ、
俺は番頭から、その長官に就任したのだった。
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