恋口の切りかた
ここはちょうど伊羽家と結城家の中間地点の辺りだ。

白い塀だけが延々と続く人気のない道で、


わらわらと、五、六人の男が現れて周りを囲んだ。


全員手には抜き身の刀。

暗くて顔はわからないが、
身軽そうな装束に身を包んだ男たちは──先刻相手にした浪人たちとも違う格好で、侍には見えなかった。


青文が、提灯を投げ捨てた。

私は──
遠い遠いいつかの日に味わったのと同じ嫌な感じが
虫の大群のように背を這い上ってくるのを感じながら、鯉口を切った。


道に堕ちた提灯がめらめらと燃えて、周囲の塀に男たちの影法師を無気味に浮かび上がらせた。


「狙いはどちらだ? 私か? それとも……」


油断なく男たちを見据え、屋敷を出てからずっと手にしていた細長い風呂敷包みを解きながら、

覆面家老はくぐもった声で彼らに尋ねた。

しかし返答はなく、男たちは無気味に沈黙したままで

一番近くにいた男が、手を振って合図した。


二人が、同時に打ちかかってくる。



「やはり私のほうか!」



青文が舌打ちし、

男たちは私を無視して、真っ直ぐに覆面家老を狙って刀を振り下ろした。
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