恋口の切りかた
一人になった子供の彼は、その容姿の珍しさから旅芸人一座に拾われ、各地を転々として──


──無論、子供の身で盗賊の真似事に手を染めていたなどという話は、俺もこの日はまだ聞かされていなかったのだが──


やがて十二の歳に「仕事」で立ち寄ったこの城下で、彼は何を思ったか生家の前に戻ってしまった。


今さら戻ったところで、追い返されるだけだろう。

そう思っていた彼の予想に反して、母親の面影を宿した珍しい子供の姿を見たこの家の連中は、しかし戸惑う幼い青文を再び伊羽家へと迎え入れ、


その後、十五になって覆面姿で人前に現れるまで


三年の長きに渡って彼をあの座敷牢に閉じこめ、鬼畜生の行為を行ってきた──

と、そういうことらしかった。


俺は改めて、

五年前にまみえた当時、
今の俺と二つしか変わらない二十歳という若さでありながら、

親父殿や老獪(ろうかい)な政敵連中と互角に渡り合っていたこの城代家老の、得体の知れない化け物じみた怜悧冷徹な人格が
いかにして形成されたものなのか──

波乱に満ちたこれまでの彼の人生を知って納得した。
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