恋口の切りかた
「ずっと一緒にいたい。

留玖は円士郎様のおそばにずっといたいです……!

でも……だけど……」


こんなこと、口にしたってどうにもならない──!


「一緒になんてなれない!

エンは、この国の先法御三家の一つの、当主になる人で、

私は結城家に拾われただけの農民の子だもん!

そんなことわかってるっ!」


やだよ……

どうして私、こんなこと円士郎に言ってるんだろう。


「私……私……初めから、武家の子だったら良かったのに──

私だって、円士郎様とちゃんと身分の釣り合う武家の子供に、生まれたかったよぉ──」


これまでずっと押し殺してきた感情を全部吐き出して、私は円士郎にしがみついて泣いた。


「留玖……」

「なんで……? どうして……私……どうせ捨てられるだけなのに……村の子供なんかに生まれてきちゃったのよぉ……」

「留玖……っ!」

円士郎が焦った声を出した。

「留玖、わかった。もういいから」

「私だって!
私だって、最初から武家のお嬢さんに生まれてたら……そうしたら──っ」


続けて口にしようとした言葉は、

口の中に押し込まれて──


優しくて柔らかい口づけで、円士郎が私の唇をふさいでいた。
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