恋口の切りかた
俺は青文の顔色を窺いながら、「いや」と横から口をはさんだ。

「こいつは伊羽家の血を引くれっきとしたこの国の武士だ」

「だが、その風貌は──」

「母親が、紅毛人の妾だったんでな」

青文は緑色の瞳に自嘲気味の色を浮かべて説明した。

「生まれてすぐに伊羽家から出されて、各地を転々として育ったんだよ。その時代に緋鮒の仙太と呼ばれていた」

「成る程、そういうことか」

帯刀が剣呑な空気を放ちながら沈黙した。


「どうする? 神崎帯刀、今ここでこの奸臣を討つか?」


青文が言って、

隼人が息を止めて二人を見比べ、

俺は脇に置いた刀に手を伸ばした。


「円士郎殿」と、それを見た青文は静かに制止の言葉を寄越してきた。


「俺は、正しきことを行おうとする者が、権力を目的とせずに俺を討とうとするならば甘んじて受ける。

それだけのことをしてきたと、言ったはずだ」


「ふざけんな! 俺も──お前の過去を全て知った上で、この国にとって必要な人間だと──そう言ったハズだ」


青文は鼻を鳴らして、それから帯刀に視線を戻した。
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