恋口の切りかた
「ボクは、そこの宗助の無念を晴らすと言って霊子殿がこの屋敷に入ったまま戻らないので、その救出にだな……」

鬼之介は雨の中にいる宗助を見て、そんな説明をした。


知らないところで色々なことが起きてたんだなあ、と私はびっくりして、


「ふむ、そちらの状況は何となくわかるな」と、私たちをジロジロと眺め回していた鬼之介が鼻を鳴らした。


「そこの操り屋!」

鬼之介は、背中に差していた朱塗りの柄の槍を抜きながら、青文に向かって声を張り上げた。

「こいつを貸してやる」

しゅるしゅると紐を解き、鬼之介は槍の先に被さっていた布の覆いを取り払って──


中から現れたのは、枝分かれして鎌のような刃が横に突き出した槍の刃だった。


青文が手にしていた真っ直ぐな刃の直槍ではなく、十文字槍と呼ばれる槍だ。


「鹿島神流に通じる無想流槍術の槍は元を辿れば十文字槍。
その技は免許皆伝者のみに伝えられる。

つまり──免許皆伝の貴様になら、この槍は使えるはずだ!」


鬼之介が怒鳴り、青文に向かってその槍を放り投げる。


青文の手が、ぱしんと槍を受け取って──
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