恋口の切りかた
取り引き──?


私はそう吐き捨てた女の人と、にやにや笑っている青年の顔とを見比べて、

この人心に通じた金髪の操り屋と、鎖鎌の使い手との間で何があったのかはわからないけれど、青文がお得意の知略であの男を言いくるめたらしいということだけは想像できた。


「私のことも誘惑してみる? あなたみたいないい男の言葉になら、案外なびくかもしれないわよ?」

「クク……誘惑するのもいいが、こんな美人になら口説かれてみるのも悪くないな」


二人は、殺伐とした斬り合いの場には酷く不似合いな、そんな軽口の応酬をして、


「しかしこいつはどうするかな」

青文が苦笑しながら手元の武器を見つめた時──


派手な轟音と共に、庭に面した障子が「爆発」し、

屋敷の中からあちこち焦げた鬼之介が転がり出てきた。


縮れた髪の毛が笑えるくらいぼっさぼさになって広がっている。


「あのクソガキィ……」


唖然とする私たちの前で、縁台から庭に転がり落ちた鬼之介はうなるように言って身を起こし、

「む? おつるぎ様……?」

私たちのほうに気づいて眉根を寄せた。


「どうして鬼之介までここに?」

初めて会った時のようなマントの鎧武者を、私はぽかんと見つめた。
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