恋口の切りかた

 【剣】

「これからは、一緒に幸せになろう」


そう言ってくれた大切な人に、


「はい、殿」


と、頷いて、


私は与えられるだけの日々に別れを告げた。



体の芯が溶けてしまうような、甘くて優しい深い口づけに、

私は円士郎の腕の中で全身の力が抜けていくのを感じて、


気がついたら敷布の上に押し倒されていて、

円士郎の体の温もりと重みを感じていた。


「今日は『全部』してやるよ」


薄ぼんやりした闇の中、

私の上で、円士郎はいたずらっぽくて熱っぽい声で囁いて、

円士郎の手がしゅるしゅると私の帯を解いて、


彼の手が肌に触れて、心臓と一緒に私の体はびくんっと跳ねて、


「ぜ……全部って……何するの……?」



私は恥ずかしくて、ぎゅっと目を瞑ったまま、

ずっと頭の中にあった大きな疑問を口にした。
< 2,411 / 2,446 >

この作品をシェア

pagetop