恋口の切りかた
「今日は何用だ?」

「お世話になっております。本日は、金魚を売りに参りました」

『遊水』と呼ばれた金魚売りは顔を上げて、美しい瞳で親父殿を映した。


「……なんだよ、こいつ親父の知り合いか?」

俺は二人を見比べた。


「うん? 前に鯉のことでうちに来た時には──お前たちは見なかったか」

親父殿はそう言った。

そう言えばしばらく前に、池の鯉に病気が出たことがあった。
魚に詳しい職人が助言に来て、治まったと聞いていたが。

それがこいつか。


「そう言えば金魚も育てていると言っていたな」

「副業は色々……と言いますか、金魚のほうは本業なのですが」


遊水の言葉を聞いた親父殿は、


「そうか。よし、では買おう」

と言って──
結局、俺の抵抗はあっさりと無に帰したのだった。
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