恋口の切りかた
「ちょ、ちょっと待ちなさい!」

ここに至って、
半ばボーゼンと事の成り行きを見ていた虹庵が制止の声を上げた。


「宮川鬼之介新三郎三太──……ええと、申し訳ない、宮川殿」

虹庵は宮川鬼之介新三郎三太九郎太郎五郎衛門之進の名を呼ぶのを途中で断念して、

「これは剣の勝負なんだ。しかし今のは──

──火薬か?

心の一方は兵法として認めるが、だが……こういった仕込み武器というのは……」


「認められない、とでも言う気か師範代殿」


鬼之助は鼻を鳴らした。


「師範代殿に問う!
この道場が掲げる──いや、師範代殿が究めんとする武芸とは何だ!?

武の道とは肉体の鍛錬のみに打ち込むことか?

否! 様々な剣法を渡り歩き、ボクが出した結論は──」


鬼之助は朗々たる声で冷たい空気を震わせた。


「──人が扱えるあらゆる武器、肉体のあるゆる機能を駆使し、戦において人間が辿り着ける極限の強さを求めること!」
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