恋口の切りかた
仰天したのは家の者で、俺が勉強や剣術の稽古も逃げ出さずに真面目に取り組むようになったので、

母上などには体の具合でも悪いのかと本気で心配された。

ただ一人事情を知っている親父殿はほくそ笑んでいただろうが。


剣術だけではなく刀丸は寺子屋の勉強も良くできていたので、

俺は年上の面目を保とうと結構必死になったのだ。


寺子屋で習わないようなことを覚えて行って教えてやると、刀丸は凄い凄いと喜んで俺の話を聞き、感心してくれるのでなかなか気分がいい。


そして同時に、

教えた知識を彼は驚くべき早さで吸収した。


それもまた、俺の教え方がうまいからだと言ってくれるので……


……うーん、無茶苦茶気分がいい。



強いのに威張らないし、あれだけ悪名を轟かせて皆に忌み嫌われていた俺のこともこうして慕ってくれるし……

出会った頃はへらへらしたいやなやつだと思ったものだが、こうして接してみると全くかわいいやつだ。




そんなわけで。


あっという間に、刀丸は俺のお気に入りになった。
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