恋口の切りかた
急に、この世の中の全てが

自分という人間の全てが


嫌になった。


何をやっても体の真ん中だけ冷たいような、お腹の中に石の塊があるような感じがずっとつきまとって、

ご飯を食べても味がしないし、稽古も全然集中できなかった。


少なくとも、自分ではそんな気がしていた。



けれど──



私はこの日、稽古中の試合で初めて虹庵を破った。

虹庵はよくやったと褒めてくれて、


でも円士郎は、

いつもこんな時にこれまでそうだったようには
喜んでくれなかった。


円士郎は怖い顔で、俺とも勝負しろと私に言って、



そしてやっぱり私が勝った。



ここのところ円士郎はずっと私に負けていて、
それを気にしているようで──

この日はそれきり黙り込んでしまって、私がどう声をかけても一言も喋ってくれなかった。
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