恋口の切りかた
俺の言葉を聞いた冬馬は、ハッとした表情になり

何か考え込んでいるように目が泳いだ。



「そうか、兄上は……私と風佳殿の関係をそのように──」



……何だ?


「──いえ、失礼いたしました」


俺に訝る暇を与えず、
冬馬は俺の着物から手を放して──

どこかホッとしたような顔で、素早く言葉を続けた。



「そうです、大河家出身の私は……風佳殿の実の兄ですから……」



冬馬は堅物であると同時に誠実な奴だ。

俺にはそういう盲信と油断があった。



俺が冬馬の出自についてもっと正確な知識があれば──あるいは、

あいつのように疑り深く、こういった人の心を見抜く能力に長けていれば


気づけたのかもしれないが。



俺はまさか──この時、冬馬が

己と風佳の保身のために、俺に対して嘘を吐いたとは夢にも思わなかった。




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