恋口の切りかた
俺は硬直して──、


「てめえ! 『白輝血』の兵五郎!」


橋のたもとから聞こえてきた怒鳴り声で、そちらを振り向いた。


「なんでてめえらがここにいやがるッ!?」

「これはこれは銀治郎一家の」


見れば野次馬の中、先程の銀治郎の子分どもと睨み合う男たちがいた。


「おーやおや、ひょっとして死んだのは『虎鶫』の若い衆かい?」


派手な着物に身を包み、
ぞろりと取り巻き連中を引き連れて、

挑発的な態度でそう言うのは
年の頃なら三十路に届くか否かというまだ若い侠客の男だった。

蛇のような目つきが印象的だ。


俺も何度か見た覚えがある。


白輝血の兵五郎──


この若さで、川向こうを縄張りにしている兵五郎一家の親分である。

虎鶫の銀治郎とはこの太鼓橋を挟んでシマを分けていて、

まあ、いさかいが絶えない仲ってやつだった。



「白々しいセリフ吐きやがって!」

「こんなところにいやがるとは、これもてめえらの仕業かッ!」


頭に血を上らせた様子で、銀治郎の子分たちが食ってかかり──


「はァ!? 言いがかりつけてんじゃねえよ虎鶫のザコどもが!」

取り巻きの中から、兵五郎の横にいた長身の男が声を荒げて前に出た。

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