恋口の切りかた
え、ええ?

うろたえる俺。

「ち、違う、違う違うっ」

赤い顔で焦る留玖。


そうか、だから俺は留玖に拒絶されたのか……?

恐慌に陥っている俺の頭はそんなことを思って、


や、やべェ、遊水が相手だと勝ち目ねえかも……

と弱気になったりして、


「ちょっと、遊水さんも何とか言ってよ!」

留玖の悲鳴に俺が遊水に視線を戻すと、

遊水は相変わらず俺とは目を合わせようとしなくて──



「と言うか、あ……兄上は、よくこのような現場で平然としていられますね──」

口元を押さえた冬馬が、顔面を蒼白にしているのに気がつき、


ようやく俺は、

遊水が冬馬同様真っ青になっていて、

視線を合わせようとしないのではなく
俺など眼中にない様子で、

目が泳いでいるのではなく、
焼死体とその向こうに広がる町並みのほう──死体の周囲をめまぐるしく見回しているのだと理解できた。
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