恋口の切りかた
「げつどく?」

「ああ。もしもこの文字が『げつどく』と読むのだとすると──」


鬼之介は更にその横に、



『毒』



という漢字を足した。



「げつ──毒?」

俺と留玖は顔を見合わせる。

「そうだ。貴様が今語った吐き気や錯乱、黄疸症状の後に死に至るという話は、火傷の症状というよりは毒物の中毒症状に思える」

「月読で焼死した者は例の狐の蕎麦屋でソバを食ってるのが特徴だが……ひょっとしてそのソバの中に何か入ってたってことか?」

鬼之介は難しい顔をして、しばらく宙を睨んでから、

「貴様の知り合いに、本草学か何か──とにかく鉱物に詳しくて、同時に蘭学に通じた学者はいるか?」

と訊いてきた。



本草学と蘭学に通じた学者?

って言ったら──



「さすがにそんな都合のいい人間はいないか……」

溜息を吐く鬼之介に、

「いや、そういうことなら一人、打ってつけの奴がいるぜ」

俺は、頭の中にあの美人な女絵師の顔を思い浮かべながら、ニヤリとした。
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