恋口の切りかた
杖を突きながら歩く鬼之介を伴って、

佐野鳥英の長屋を訪れると、


中には遊水がいた。


「え? え? どうして遊水さんがここに……?」

留玖がびっくりした声を出し、

「お邪魔だったか?」

俺が問うと、


「いや、俺はもう戻るところだ」

と、遊水は立ち上がりながら言った。


長屋の中に座して遊水と微笑みながら会話していた女を見て、

鬼之介は隈に覆われた目を丸くした。


「貴様が妖怪絵師の佐野鳥英だと!?」

「妖怪絵師ではない。私は生き物絵師だ」


ムッとした様子で鳥英がいつもの如く訂正した。


「佐野鳥英って女だったのか?」


そう言えば鬼之介は、遊女の内臓が抜き取られてバラバラの黒焦げで見つかった事件で
犯人を鳥英だと言い張ったりしていたな。


「しかもこんな美人だったとは──」


鬼之介は食い入るように色白の美女を見つめ、


「ほれ──」


何やら言いかけたところで、

土間に降りてきた遊水に杖を蹴り飛ばされてすっ転んだ。


「惚れたとか嫁になれとか言ったら殺すぜ」

倒れた鬼之介を緑色の瞳でジロリと一睨みし、遊水が言った。


俺もややあきれつつ鬼之介を見下ろした。

こいつ……前に留玖にも同じこと言ったくせに。


普通、

その留玖が一緒にいるこの状況で、他の女に同じセリフ言おうとするかァ?
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