恋口の切りかた

 【剣】

鬼之介と鳥英の話は、学者先生が怪談をするとこうなるのかな、という内容だったけれど──私にとってはやっぱり怖いことには変わりがなかった。

その後も怪談は続き、

「それじゃあ、俺からも怪事件に関係して──最近、城下で囁かれている七不思議があるのをご存じですかね?」

遊水がそんな話を始めた。


「このうち二つが、狐の蕎麦屋と突然人間が燃えちまうってェ焼死事件なんですがね、他にも噂がありまして……一つは、丑の刻参りの鬼女の話です」


丑の刻参り。
鬼女。

私はもうその響きだけでぞっとしてしまって、思いっきり円士郎にしがみついたら、「いいぞ遊水。その話しろしろ~」と、彼が物凄く嬉しそうに言って、泣きたくなった。


「城下の川のほとりに、水神様を祀った神社がありやすでしょう。
そこの神社にね、毎夜毎夜、丑の刻になると──出るんだそうですよ」


遊水はもったいぶってそう言って、ニィっと口元を吊り上げた。


「夜中にこの神社の前を通りかかったお人の話ではね、コーン、コーンという木を叩くような音がする。

何だろうと恐る恐る様子を見に行くと──」


金魚を売り歩く口上に慣れているせいだろう。
遊水のこういう話の切り方とかが、一々怖くて嫌だ。


「──髪を振り乱した鬼の形相の女が、
この世のものとも思えぬ恐ろしい声で、
恨み言を叫びながら、
境内のご神木に藁人形を打ちつけていたんだそうで」


わああ、と円士郎に抱きつく私。

いいぞいいぞ遊水~、とニヤニヤする円士郎。


「そのお人は、腰を抜かして音を立てちまってね、

すると──

ぐるうりと女の首がこちらを向いて、

女からこんな声が出るのかという、物の怪(もののけ)じみた声が──」



見ィたァなァ、と言ったのだそうだ。



私は泣き出した。

気がついたら円士郎の腕どころか体に全力で抱きついていた。
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