恋口の切りかた
月読で怪死した者の吐瀉物が青白く光っていたという話は、このfosforなるものが含まれていたと考えればつじつまが合う。

「いずれにしても、物質が存在している以上、狐や妖怪の仕業だという話よりは現実的だ」

俺は鳥英に礼を言った。

たまたまこの物質のことを知った人形斎が独自に研究を重ねて、月読に使える形にしたとも考えられる。

と言うか、鬼之介の話に懐疑的な俺には、そうとしか思えなかった。


「まあ、実際に犯人が月読で人間を燃やすところを見ることができたら、もっと何かわかるのかもしれねえけどな」

俺はそんなことをぼやいて──


口に出すと言葉は力を持つという「言霊」なんてものがある。

こんな怪談の場で、不用意にそんな言葉を口にしたせいなのか、それとも実際に一つ怪異が起きるという百物語の呪いでもかかったか、


口にした己の言葉が現実のものになろうとは、この時俺は考えもしなかった。
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