人魚姫
「コレ、言葉通じるの?」

水面を見つめたまま動かない人魚を指して訊く。
准は彼女の髪を手で梳きながら「少しは」と小さな声で答えた。

灯りを消したままでのその行為が何故か酷く異常に思えて、私に嫌悪感を抱かせる。

私は黙ってその場を離れた。
冷蔵庫を勝手に開けて、コーラの缶を2本取る。
2本の缶を持って准の部屋へ。
缶も、自分の体もベッドに放り投げ、さっきの嫌な気分をもう一度脳内に広げてみた。

── 彼女は邪魔だ。

「寝てんの?」
「違う」
「じゃぁ誘ってんだ」
准がベッドにもたれながらコーラの缶を開ける。
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