【短】涙が出るほど好きだった
最後くらいこっちを向かせたい。
無理やりなその行為。
でもそうするしかなかった。
思い切り顔を近づける。
「…え?………柚姫…?」
「最後にキスくらいいいじゃん……。」
大好きな奏君。
「こっち向いてよ…。」
彼は、きっとこうしたほうが幸せだろうと。
「あたしはずっと奏くんを見てたよ。…奏クンと付き合うことになってすっごい嬉しかった。………でも奏クンの視線があたしに向く事はなかった。目が合うことだけはなかった。……だって奏くんは……いつも香織さんを見てたから……。」
「…柚姫。」
「今までありがとう。奏くん。」
「…柚姫!?…俺、あの」
「さよなら!」
つかまれた腕をはなす。
胸が痛い。
涙がもっと溢れてく。