【短】涙が出るほど好きだった
「…奏くん?」
「え、あぁごめん。なんだっけ?」
「ううん…なんでもない…。」
やっと振り向いてくれた彼だけど、なんだか悲しい。
「…柚姫。」
すねているのを気づいてそっとあたしの手を握ってくれる。
キュゥゥゥウウン…♡
どんなに怒っててもやっぱりドキドキしてしまう。
でも、それ以上はしてくれない。
「来月の日曜日、デートしよーか♪」
思いもよらない言葉に目を見開く。
「うん!行く行く!」
「俺、チョコレートもらえるんだろ?」
いたずらそうに笑う。
つられてあたしも笑った。
「もちろん♪その日はバレンタインデーだもん♪」
そう、その日は2月14日。
カップル達の大事な日、バレンタインデー。
「甘くないやつ頼むよ?」
「分かってるよぉーだ!」
そうこう話しているうちに
あたしたちがいつも別れる道まで辿り着いた。
あたしはここに近づくたび
奏くんと一緒にいられる時間が少なくなっていくから
ここが嫌いだ。