キョムソーヤの茶番世界
最終章
盲目の猫が暫くの間、猶予を俺に与え立ち去った後、俺は最後の遺書なるものを思念した。

俺は死の末に、人生のうちにあるいくつもの始まりのことを思い出し、どこかのきっかけで挫けたというようにありとあらゆる過去が綺麗に整頓されたように思い出していた。
もちろん、自分の親のこと。
その親の愛情を知ったとき、それを裏切ったとき。
妻と出会ったとき、妻を裏切ったとき。
娘の誕生、そして、娘の行く末を追えなくなった俺の姿。

そして、あまりにも素朴なことを考えていた。
それ以上は俺の思考は回らなかった。

世話になった部長に向けて会社がこのまま順調な売上げをあげられること願い。
娘が妻の幸せを願い。
父と母がこんな息子であっても幸せだと思ってくれることを願った。
それから、世界がもう少し優しくなれること。
これから資源を大切にして綺麗な地球に長く人類が過ごせることを願った。

そして、いくつもの希望と願いが頭のなかを順序よく流れていたときに突然、俺の意識は無くなってしまった。

「あっ、」と途切れたしまった。

俺は盲目の猫が戻ってきて、最後のひと噛みで俺を消したことを悟った。
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