蛙の腹
第10章 女は蛙B
女は水または蛙。

蛙はアマガエル、いぼ蛙、殿様カエル、牛蛙。
水は、泥水、雨水、清水、濁水。僕の心象イメージだ。

この結界を壊さぬかぎり、女性を求めることはないだろう。

複雑な気持ちを紐とくにも、その紐すら見当たらない。
そして世界はこの二つを対象としてつくられた。

お互いの感心を引くために。
女は裸で路上を駆け抜けた。

僕は呼び止めた。
「おい、待てよ。」別の所で絶叫が聴こえる。

男が声を上げている。
僕はそれを理解した。
僕は両手を広げて倒れた。

「気持ちいいな。このままアスファルトにでもなろうかな。」

僕のおなかの上に蛙がのっていた。

その蛙にはペガサスのような綺麗な白の羽がはえていた。

蛙は両足で立ち上がり、こう言った。

「さぁ、はじめよう。」

さっきまで八百屋のポリバケツの上で寝ていた猫は、悪態をついて言う。

「すべてはいま一度、試される。これから8分後の世界に我々が生命を試される種族として神に選ばれる。」
< 16 / 18 >

この作品をシェア

pagetop