蛙の腹
第2章 蛙の皮膚
ここから見えないところでは今日も一日毎日と同じように忙しく働いて時間を換金するように働いているんだ。

僕は働いていた時間と、労働することのない時間を比べた。

24時間は自由でいるのには多すぎる。
だが、働くには多すぎる時間だ。
そして、そんな労働の契約のない僕の時間は一銭の価値も生まない。

検討もなく転職サイトを検索して自分に与えてくれる仕事を探す。
パン屋、芸術家、音楽家、SF作家、レーサーで検索するがヒットがない。

アメリカン・ヒーローのように正義のヒーローを育成するベンチャー企業を検索するがこれにもヒットが一つもない。

最後に「生きる」と入力して検索するが結果は一緒。

会社を辞めてまた雇い主を探すことになるとはなんとも不自由だ。
自分で生産する手段もなく、売り物がないというのはなんという不自由だ。
誰か優秀な学歴をもった起業家の用意した商品を売って給与を貰い、当月の生活に支障がない程度に与えられる給与。

それ以上に自分のすべてを献身的に捧げなければならないとは・・・なんと考えると皮肉なこと。

経営者が羨ましい・・・
自分の好きなことをそのまま仕事にして反映して、直近で生きていける。

僕のように学歴も才能もないのに、人に使われるのを嫌いなのに、それでも雇い主を探して、時間と労働力だけを売りに歩くのは考えるだけでも不毛だ。

労働は生活の中心だが、労働のなかだけに人のすべての喜びが実るとはとうてい信じられない。
努力とか根性、情熱、人の弱さに蓋をして、強きスローガンで自分は頑張っていると、自分は強いと自分の正しさを証明するように気概よく言い張っているだけのような気もする。

影に埋めて隠すのはいつも人間性。
人間は巨大なシステムの前に挫けた。

そしていつも人間が常に何か新しいものになろうとする。
更新する人間能力。
社会人とは簡単に作られたシステムのなかで煩雑に無駄を生み、雇用を促進する。
それを複雑にしているのはシステムを歓迎した人間たちの思考があえて事を難しくしたように思えてならない。

「先生・・・先生・・・」

僕はいつまで他人の土俵に自分を支配されなければならないのでしょう。

そんなことを卑屈に考えていた。
< 2 / 18 >

この作品をシェア

pagetop