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____その日、

カウンセリングを終えた
彼女は正式に事務所と
契約する事を決めたんだ。

恩田専務が居るから
俺も安心して任せていられる。

彼女を迎えに来ていた俺は
付き人を卒業するにあたり、
同居の件で事務所と話をした。

彼女の場合、悪い意味ではなく
清純なイメージよりも
浮世離れした
不思議な印象がウリだ。

訊ねられれば"真面目なもの"と、
互いに今後の発言に注意すれば
ダメージにもならない。

そこの所は今更
隠しようもない事実だし、
目を瞑ると云ってくれた。

専務も何よりシアのメンタル面で、
1人暮らしが
心配ではあるのだろう。

だいたい、
その事で余程の事がない限り、
面と向って訊ねてくる者も
いないだろうが。



それからと云うもの、
話はトントン拍子に進んだ。

ただし、そこはやはり
会社の品格を貶めない程度
ではある。

当分は専務が
マネージャーとして彼女と
同行している。

ファッション雑誌の
インタビュー取材や
写真集の撮影、
そして他社の化粧品のCMなど。

無理をさせない様、
専務自身が
綿密にスケジュールを組んで
いるらしい。

相変わらず人見知りが激しく
恩田専務の背中に
やや隠れ気味だが
一旦スイッチが入れば何ら
問題ないと云う。

シアほど大事にされている
新人タレントは
そうそう居ないだろう。

そして彼女を見出した
会長にも頭が下がる思いだ。

生活が変わるとすれ違いが
多くなるのは確かだが、
ウチには居候がいる。

そのお陰かシアも俺も
家での生活には特に
変わらずにいれた。

それは那須という
意外と人格者(?)な男の
お陰かもしれない。

自分達が順調に行くと、
ふと、自分の友人などの事が
気になったりする事がある。


俺もそんな1人だった。

坂巻のレコーディングの噂が
全く聞こえて来なかったんだ。





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