キャンディ
リハビリも順調に進みたった二週間しかたっていないというのに、傷口はふさがり撃たれたほうの左手で『グー』が握れるほどになっていた。

しかし完全に回復しても半年後にもう一回ボルトを抜いたり付け直さなければならないのだが。

NYPDのメイソン刑事は毎日のように見舞いに来てくれる。

それは仕事としても、またはプライベートとしてルイの大好きなスイカを持ってきてくれるときもある。

このとうに四十は超えているだろう、白髪交じりの屈強な男は、もしかしたら優しい人なのかもしれない。

もしかしたら彼は嘘などつかない人間で、私は彼を信じるべきなのかも知れない、と思う反面、いや、絶対に信用してはならない、という頑固な思いがルイの頭の中を行き来する。

それはあれだけやさしかったケビンが、実は亮介を殺したバリーと関係があったという事実が、ルイにそうさせていた。

ルイは入院しているその間、昼夜を問わず亮介を殺したやつらとその黒幕が、ルイからいったい何をほしがっているのか、いろいろと考えてみた。

事件の発端のヤンとの接点は、くまのぬいぐるみ。メイソン刑事によるとヤンは『キャンディ』と中国製のマリワナの運び屋だった。

私の記憶と麻薬を運んだタンカー、まだ見つかっていないヤンの麻薬。

接点はどこだ。

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