グリンダムの王族
その夜セシルを歓迎する晩餐会が開かれた。

クリスはぶすっとしたままその席についていた。隣の席に婚約者であるセシルが通される。
彼女が座ったのを感じながら、クリスは顔を見ないように目を逸らして横を向いていた。

「これ返すわね」

不意にセシルの声が聞こえた。
顔をしかめつつ渋々そちらに目をやると、セシルが彼の目の前にファラント王家の紋章をぶら下げていた。
また頭に血がのぼる。
クリスは荒っぽくそれを奪い取った。

「よくあんな嘘つけるな」

クリスは忌々しげに小声で呟いた。

「感謝しなさいよ。
あんたのバカな行動を、良いように説明してあげたんだから」

クリスはその言葉にまた怒りがムクムク沸いてきた。
そしてセシルを睨みつける。

「結婚したって、お前を妃だなんて認めないからな」

セシルはそんなクリスにちらりと一瞬目を向けた。

「構わないわよ。
あなたが認めなくても関係ないし」

全く動じることなくそう返される。
クリスはカァッと顔を赤くすると、またぷいっと顔を背けた。

2人はそれっきりお互いに口をきくこともなく、ただ黙ってお酒を飲んでいた。

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