グリンダムの王族
王子と呼ばれた少年は、男の方を見ようとはしない。
まだ相変わらず窓の外に目を向けたまま、「帰りたい」と一言呟いた。

男はその子供のような言葉に思わずため息を漏らした。

目の前の少年は、グリンダムからひとつ国を挟んで遠く離れたファラント王国の第一王子である。そして彼はそのファラント王国の王に仕える宰相である。次期王位継承者である王子は、間もなく婚約者であるグリンダム国王の姫と会う。その大事な場に、宰相である彼が王の代わりとして同行している。

王子は現在17歳で、まだまだ若い。この婚姻による同盟の話が出たときには、王に対してかなり反発していたのを思い出す。

”会ったこともない姫と結婚だなんて、
俺は同盟を結ぶための道具なのか?!”

そんな言葉を王の隣で聞いていた宰相は、こっそり苦笑した。

同盟を結ぶための道具、、、。

―――まさにその通りでございます、、、。

そう心の中で呟いた。

そもそも第一王子として産まれたからには自国にとって有益と思える国の姫との婚姻は当たり前ではないだろうか。まだ17歳とはいえ、甘やかされて育った王子は少し世間知らずすぎると思えた。

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