グリンダムの王族

王子妃の里帰り

「鉱山の採鉱は始まったのかしら」

ファラントでいつものように剣の稽古に混ざりながら、セシルは休憩中に近衛騎士隊長レニアスと話をしていた。

「そうですね。特に開始したとは聞いておりません」

セシルは「ふぅん」と言って考えるような間をおく。

「わざわざ急いで話をまとめたわりに、のんびりしてるんだ、、、」

目を伏せて考え込む王子妃は、いつものように美しかった。
いつものようについつい見惚れてしまう。

「―――セシル!」

そこに、最近セシルを悩ませる声が聞こえてきた。
セシルは”あちゃぁ、、、”というように目を閉じた。

騎士隊長は慌てて声のほうを振り返る。
クリス王子が大股でこちらに近寄ってきているところだった。

「なにやってるんだよ!」

クリスはセシルと隊長のもとに来ると、いきなりそう聞いた。

「、、、剣の稽古でしょ」

セシルが冷たい視線を向ける。
クリスは戸惑うレニアスをちらっと見る。
レニアスはぎょっとしたように固まった。

「稽古してないじゃないか!なに話しこんでるんだよ!」

「今休憩中で、ちょっと話してただけよ、、、」

説明するのもめんどくさい。クリスはレニアスを睨むと、「あっち行け」と命令した。
レニアスは頭を下げると、慌ててその場を離れた。

セシルは遠ざかる背中を見つつ、「あぁ~、、、」と悲しげに眉を下げた。

「なにが”あぁ~”だよ。
あの男と話すのが、そんなに楽しいのか?!」

クリスは不機嫌そうに聞いた。セシルはため息をついた。

「妬かないでよ、うざったい」
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