グリンダムの王族
帰途についた馬車の中は静かだった。

隣に座るクリスは何も話さない。セシルの方を見ようともせず、当然触れようともしなかった。

―――怒ってるのかな。

セシルはそんなことを思っていた。

そういえば”クリスが好きなのは自分自身よ”みたいなことを言ったのだった。
明らかに傷ついていたが、放置していた。
でもセシルの暴言は今に始まったことではない。

―――そうか、戦の心配をしてるのかな。

セシルは1人納得しつつ、窓の外を眺めていた。

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