グリンダムの王族
車輪の音を響かせながら、ファラント王国の馬車が去っていく。
カインとリズは並んでしばらくそれを見送っていた。ラルフや臣下はすでに政務に戻っていた。

ふとカインの目がリズに向けられる。
リズはぼんやりと遠くを見つめている。その心は遠い所に居る気がした。

「、、、何話したの?」

カインの言葉に現実に引き戻されたらしい。リズがカインを振り仰いだ。

「え?」

「、、、クリス王子と」

カインの問いかけにリズは驚いたように目を丸くした。

それについて昨夜は何も聞かれなかったので、カインにとっては興味のないことだと思っていた。
カインは黙ってリズの答えを待っている。
リズはしばらくその緑色の瞳を見つめていたが、やがてにっこり微笑んだ。

「好きな人の話を、、、」

その答えに、カインがふっと微笑んだ。
そしてリズの肩に手をまわし、ファラントの馬車に背を向ける。

「それは興味深い話題だな。俺も聞きたい」

2人で城内に戻りながら、カインが言った。

「、、、カイン様には、秘密です」

「へぇ、、、」

カインの腕がリズの肩を抱き寄せる。
リズが体勢を崩して小さな悲鳴を上げたと同時に、カインがリズの耳元で小さく囁いた。

「―――じゃぁ今夜、
無理やり聞き出すことにする」

カインはリズを離すと「講義、頑張れよ」と声をかけて颯爽と去っていった。

後に残されたリズは、1人耳まで真っ赤になって立ち尽くしていた。


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