グリンダムの王族
やがて入れ替わるようにして、青年が現れた。

王弟カインらしいと認識する。王と同じブラウンの髪に、緑色の瞳だった。
髪は兄のように長くはなく、耳が隠れる程度の長さである。
切れ長のその目も兄と同じだが、王より若いためか、その目に王のような怖さは感じられなかった。

深緑色の上等な服には金色の刺繍がほどこされている。
彼の目が寝台のリズを捕らえ、少し戸惑ったような顔をした。

「、、、どうした?」

思わずそう聞きながら、ふと、「あ、そうか」と独り言のように呟いた。
彼女の泣いている理由に思い当たったらしい。
そしてふっと笑みを浮かべると、リズの座っている寝台に腰をかけた。

「怖かった、、、?」

彼がそう言った。リズは何も言えずに目の前のカインを見ている。
彼がなにをしに来たのか、さっぱり分からなかった。

不意にカインは寝台に片手をつくと、もう片方の手をリズの耳の下に潜らせた。
そして顔を寄せる。リズは彼の意図に気付き、慌てて顔をそむけた。

そんな反応に、カインは動きを止めた。

「、、、なんで逃げるの?」

リズはその言葉に驚いたように目を見開いた。

「私は、、、王の側室です」
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