ー親愛―
事務所でタイムカードを打った後
いつもの入所のフロアへと向かう
“あれ？香坂さん、帰ったんじゃあ？”
“あ、あの…。三上さんは？”
“三上さんなら、たぶんリハビリ室じゃないかな？……明日の用意をするとか…。”
“ありがとうございます”
全部聞き終えないうちに私はリハビリ室へと向かう
ｶﾞﾗｶﾞﾗ
リハビリ室の引き戸をゆっくりと開ける
パーテーションで区切られたその部屋には 誰かいる気配は無い
…誰も いないや…
開けた引き戸を閉めようとした時
ｺﾄ
物音がする
パーテーションの向こうから音が聞こえる
引き戸を開けたまま パーテーションの向こうへと 足音を立てずに向かって行く
パーテーションの隙間から見えたのは 三上さんの後ろ姿
だけどその後ろ姿には いつもの三上さんの元気なオーラが全くといってイイほど 無い
私は その空気の悪さに三上さんに声を掛けれず ただ様子を見ている事しか出来なかった
