男子、恋をする

一瞬。
針で指を刺したのがバレたのかと思ったけど。


君原妹の顔色はさっきから全く変わってないから多分気付いて無い。



バレたらまたからかわれるに決まって。


それに、


「……いい。自分でやる」



ここでコイツに渡すのが癪だった。


なんかコイツには頭が上がらないのを認めるみたいだし……。



まるで子どもみたいな態度だったけど、今更君原妹に取り繕ったところで無意味だからな。



首を振って申し出を断った俺に、



「心配しなくても待ち針を打つくらい手伝いの内にも入らないわ」


「なにが……」


「寿梨の為に大城くんが一生懸命なのはわかってるってことよ」



素早くサテンを取り上げた君原妹が小さく笑ってみせた。



……なんだよ。
さっきまで俺のこと童貞とか男の方が好きとか好き勝手言ってた癖に。



そんなことを思いながら待ち針を打つ手をぼーっと見つめていると、



「左手出して」


「はっ? 左手?」



あっという間に待ち針を打ち終えた君原妹がまた手を伸ばしてきた。



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