男子、恋をする
ぐうの音も出ない自分がやたらに情けなかった。
そして声を大にして叫びたい。
俺が童貞でそんなに悪いかぁッッ!!
言えばきっと沽券に関わる……っていうか、負け犬の遠吠えにしかならんからやめておく。
ていうか、実際に言ったらろくな目に遭わなかったからな。
まぁ……言わなかったら言わなかったでろくなコトが起きるワケでもない。
合宿の荷物一式をクラブハウスに併設された合宿所の男子部屋に置き、ファスナーを開いた瞬間。
「なっ!」
渚に借りたUNOの下にキラキラキャピキャピとしたコミックスが一冊。
そのタイトルを見た途端、練習が始まる前だと言うのに言い知れぬ倦怠感が体中を襲った。
“ちょっぴり怖くて最高にハッピー☆アタシとカレの初体験”
心踊るようなポップな字体に思わず愕然とする。
中2の女の子にまで心配されてるのか……俺の貞操は。
まるで40代目前で独身を謳歌するアラフォー女性が周りに危惧されてるときのような心情というか……。
頼むからそっとしといてくれってのが俺たちの切なる願いだ。