男子、恋をする
「ほら、わかんないんだろ? どうせ考えてもわかんないだろうから、清兄にでも教えて貰いなよ」
「な、なんでバカ兄貴なんかに!」
兄貴の名前で俺が苛立つのを見越してか、当てつけがましく那津がそれを口にする。
思惑通りカッとなる俺に那津はごく冷静な声色で、
「……バカはおまえだろ。澪斗」
「は、はぁっ!?」
こう言い捨てたから俺の苛立ちはますます燃え上がる。
尻も頭も軽い兄貴と比較された上に、バカ那津にバカ呼ばわりまでされて怒らないワケが無い。
もうこのバカコンビには付き合ってられん。
まともに取り合うだけアホらしい。
そう思って止めた足を再び動かそうとした時だった。
「鮎花が鏡に向かって笑顔の練習してたの、誰の為かわかってんの?」
俺の行く手に颯爽と腕組み仁王立ちで立ちはだかった乙部が、キッと鋭い目付きで俺を睨みあげる。
確かに会長からこの事実を聞いた瞬間はビビったけど。
さっきの原因不明の不機嫌モードを見る限り、ホントに俺を…………好き……とは信じがたい。