ばうんてぃ☆はうんど・vol.3~ほーんてっどほすぴたる《改訂版》
 この病院、15年前に閉鎖になったそうなのだが、その原因ってのが、院長がオペをミスって患者を死なせて、遺族に裁判起こされて多額の賠償命令を出されて経営が行き詰まり、負債で首が回らなくなって文字通り首くくって一家心中しちまったって話だ。まあ訴訟大国アメリカなら、ありそうな話ではあるが。
 しかもだ。院長一家が突然死んじまったせいで、入院患者は他の病院に転院していったそうだが、中には転院先が見つからず、無駄に死んじまったやつもいるとか。おかげでこの病院はいまだに、夜な夜な院長一家と患者たちのゴーストが院内を徘徊してるって話だ。
 曰く。窓際に立つ、白衣の男を見た。
 曰く。廊下に、車イスのキーキーという音が響く。
 曰く。病室に明かりがついているのを、通行人が目撃した。
「勝手に入り込んだストリートギャングの仕業だろう」
 名探偵ディルクは、そう結論づけた。
「いや、そうかもしれねえけどよ……」
「こんな場所では、想像力をかきたてられるのも無理はない。僕は別に超常現象の全てを否定するわけではないが、ほとんどはインチキや勘違いだと考えている。一部の実在する分に関しても、いずれは科学で説明できるものだと信じている。例えばゴーストの類で言えば、その存在は電気的なもの――もっと言えば素粒子的なものだろう。故に空中を浮遊したり、量子力学のトンネル効果によって壁をすり抜けたりもする。意思を持っているかどうかは、わからないが」
「はあ、そうですか……」
 リョーシリキガクときたもんだ。
「さっきの3つの報告にしても、ゴーストの仕業と考えるより、ここを勝手に根城にしているストリートギャングの仕業と考える方が、あり得る話ではないか?」
「まあ、そうかもしれんが……」
 そうは言っても、不気味なもんは不気味だ。
「ぢゃあさー。なんであたしのVAIOとタブレットとスマホは動かなくなっちゃったわけー?」
 泣きそうな顔して言ってくる。
 ここに入った途端あかりのVAIOと、いつも持ち歩いてるタブレットとスマホが突然動かなくなったのだ。ウンともスンとも言わねえ。
「ただの故障だろう」
「同時に3つも?!」
 にべもなく言い切るディルクに、あかりが反論する。
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