不思議の国のアイツ -暴走族総長純情伝-
子供の頃の私だったら、そんなコウの手など振り払って、家の中に入っただろうが、今は、状況が違う。
コウの力は、昔の比ではない。
私に振り払えるわけもなく、私は、無理やり、コウに引き止められた。
「離しなさいよ、コウ。」
私は、コウに背中を向けたままで、なるべく、声を抑えて冷静に言った。
「・・・・やだ。」
コウの返答は、まるでそこに6歳の子供がいるようだった。
「・・・離しなさいって言ってるの!・・・私、怒ってるのよ!!」
私は、怒り満タンの表情で振り返った。
当然、声も自然と大きくなる。
コウは、私に睨みつけられて、しょうがなく、私の肩から手を離す。
「まったく・・・・ブツブツ・・・。」
私は、ようやく、コウが、手を離したので、再び、コウに背を向け、家の中に入ろうとする。
ガシッ・・・。
コウの子供の頃とは違う大きな手が、私の肩を再び掴む。
「・・・・・・・・・・何なの?」
私は、怒りを通り越して、呆れた表情で後ろを振り返った。